へートヴィヒ・フォン・レーゲンスブルクという名前の修道女がおりました。
たいそうな高齢でした。そのため、彼女は、聖務共唱を欠席したいと思いました。もう歌を聴き取れなくなっていたからです。
そのとき、ひとつの声がして、
「内陣へ行きなさい。」
と、言われました。
すると、彼女の心に内陣へ行きたいという熱意が、湧き昇って来るのを覚え、とても弱ってはおりましたが、熱心にそこへ出かけるようになりました。
あるとき、朝課の二つの鐘が鳴るあいだのことでした。
聖主が、年の頃30歳ばかりのお姿をして彼女にあらわれました。彼女は言いました、
「愛する聖主よ、今は朝課を唱えなくてはなりません。」
また、別の折に彼女が、講話のために内陣に佇んでいると、ちょうど修道院の人々が、終課にやって来られました。この時、人々は一人残らず、彼女の心臓があたかも硝子(ガラス)越しに太陽が照らすように衣を通して明るく輝き出しているのを眼にいたしました。
彼女が、べギンとしてまだ俗界におられた頃のことでした。
コンラート王が、軍の荷役人夫に修道女たちを襲わせるという事件が起きました。その折、彼女は危うい目に遭って逃げ、自分の名誉が失われたのではないかと恐れました。
すると、彼女の心に次のような詩句が浮かんできました。
この純潔な乙女らにイエズス・キリストは、
「わが妻よ、私を愛しなさい。
あなたは、私に天使より誠実なのだから。
私は、あなたにはっきり示しました。
私は、あなたのために死を耐えたのであって、
天使のために耐えたことなど、一度とてありはしない。」
と、仰せられる御言葉が、彼女の心から真実、愛に溢れて湧き上がってきたのです。
ですから、自分の心を励ましたいと思う時は、いつも彼女は、それを絶えず口ずさんでおりました。なぜなら、神は、この言葉で苦境にある彼女に慰めを与えて下さったからです。
へートヴィヒが、いよいよ亡くなる前に病で患っておりましたが、まことに忍耐強く痛みに耐えておりました。
さて、修道院が蝋燭の祝別の行列を執り行われた処女聖マリアの清めの祝日3月2日のことでした。現在の「主の奉献」の祝日に聖母マリアが、その愛しい御子をお連れになって彼女に姿を現されました。
そして、修道院の人々とともに行列に参加なさるということが起きました。
行列が終わって後、聖母マリアは、彼女の枕辺に赴き、こう言われました、
「用意をしなさい。あなたは、もう永遠の歓びに入らねばなりません。私たち、私と私の御子は、あなたが私たちのために耐え忍んできたすべてのことに報いるでしょう。」
それから数日して、彼女は、世話をしてくれていた修道女にこれらのことを語り、聖なる死を迎えられました。
【 参考文献 】
中世思想原典集成15「女性の神秘家」
上智大学中世思想研究所
/編訳監修:冨原眞弓 (出版:平凡社)
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著者:Joanne del apocalypse
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